こんにちは、株式会社ジェネコム 代表の高岡です。
業界界隈では噂でもちきりだった Claris FileMaker 2024 が本日(2024年6月5日)リリースされました。
各種の機能追加、機能アップなどが行われている様で、お客様への提案内容にも幅と深みがでてくるものと思います。
本稿では、新しくなった Claris FileMaker 2024 概要について速報でザックリご紹介しますので、最後までご覧いただけましたら幸です。
Claris さんの発表内容や製品に関する詳細は以下のページをご確認ください。
新しい Claris FileMaker 2024 の新機能紹介と無料評価版ダウンロード
名称は『Claris FileMaker 2024 』になりました
FileMaker Pro は、バージョン19以降、19.2、19.3・・・19.6 と、小数点以下の値をカウントアップさせて、小刻みに新バージョンをリリースしてきました。
そして、2023年5月に 『Claris FileMaker 2023』という年を示す4桁の数字が初めて採用になりました。
勘の良い FileMaker ユーザーの皆様ならお分かりのこととは思いますが、本日、2024年6月5日に Claris 社から発表になった製品の名称は『Claris FileMaker 2024』、バージョン番号は「21」となりました!
というか、昨年の『Claris FileMaker 2023』発表時に、Claris International Inc. さんのブログに『最新バージョン Claris FileMaker 2023 まもなく登場!』という記事があり、これから先はリリース年に基づくナンバリングにして行くと予言がされていましたので、次にリリースされるバージョンは「2024」であることは、昨年から知っていたわけです。
気になるデータベースフォーマットは? 拡張子は? アイコンは?
前バージョンのリリース時にも、記事内で述べましたが・・・
バージョンアップで気になることは、データベースファイルのフォーマットです。
安心してください。
「fmp12」
が、そのまま採用になっており、データベースフォーマットも変更はありませんので、アプリケーションのバージョンアップを行うだけで、既存のシステムに、新機能を組み込む事が可能になります。
そして、すこし変わったのが製品のアイコンです。
大きくは変わっていませんが色が変わりました。
FileMaker Pro のほか FileMaker Server も同じ製品アイコンになっています。
Claris Connect や 2024年6月5日現在日本ではリリースされていない Claris Studio も、バージョン 2024 では、緑色の製品アイコンに変わっています。
FileMaker Pro 2024 における主な変更部分
さて、ではまずは FileMaker Pro における変更部分について速報して行きたいと思います。
・AI 連携 LLM サポート
今回のバージョンでの目玉機能と言っても良いと思いますが、やっぱり来ました、AI 連携機能です。AI 連携ということであれば、Core ML は実際の現場で使われていますし、REST API を駆使することで、ChatGPT(OpenAI)や Claude(Anthropic)との連携はこれまでも実現できていました。
FileMaker 2024 では、FileMaker Pro の機能として、LLM(大規模言語モデル)との連携可能な機能が FileMaker Pro に組みこまれました。この機能追加により、専用のスクリプトステップと関数が追加になっています。
今回のアップデートでは、AI と連携して「セマンティック検索」を行うための機能が追加になりました。
これまでにも「検索エンジンみたいな検索はできないのですか?」というユーザの声は何度も聞いてきたのですが、そういったことが行える様になるのですね。
連携可能な AI(LLM)は、OpenAI だけではなく、日本人にやさしい日本語が得意な LLM もあり、それらと連携することも可能になります。
FileMaker 2024 における AI 連携の基本情報と、LLM と連携した、セマンティック検索を行う手順などは、後日予定されている Webinar でご覧頂けるように準備を開始しました。
詳しくは、6月20日(木)12時より、Claris の公式 Web セミナーで、高岡がご説明をさせて頂きますので、ご参加をお待ちしています。
【関連 Webinar 情報】
2024年6月20日 12:00〜
Claris FileMaker 2024 では、AI と連携することが可能になりました。
・[トランザクションを復帰]スクリプトステップのサブスクリプト対応
v19.6 で追加されて話題になったトランザクション機能。この機能が FileMaker 2024 で拡張されました。これまでは、[トランザクションを開く]スクリプトステップによって、トランザクション処理が宣言されたスクリプトでのみ、トランザクション処理が有効になっていました。
FileMaker 2024 では、[トランザクションを開く]スクリプトステップが実行されたメインスクリプトから実行したサブスクリプト側で、[トランザクションを復帰]スクリプトステップを実行した際に、サブスクリプト側で行われた変更もメインスクリプト側で行った変更も無かったことにしてくれるようになりました。
詳しくは、6月28日(金)12時より、Claris の公式 Web セミナーで、高岡がご説明をさせて頂きますので、ご参加をお待ちしています。
【関連 Webinar 情報】
2024年6月28日 12:00 〜
Claris FileMaker 2024 で拡張されたトランザクション機能を使う。
・[FileMaker Data API を実行] スクリプトステップ の機能拡張
このスクリプトステップ自体は、v19.0 から存在していて、スクリプトステップから FileMaker Server が提供している FileMaker Data API の基本機能を使用して、現在のデータベースへのリクエストを実行し、結果を JSON 形式のデータで受け取れるという機能です。このスクリプトステップへの動作のリクエストは、Action というキーに「read」または「metaData」のいずれかを指定していました。
今回のバージョンアップで、「read」、「metaData」に加えて、「create」、「update」、「delete」、「duplicate」といった、データの更新が行えるアクションが追加になり、[FileMaker Data API を実行] スクリプトステップを使用して、FileMaker Data API の作法で、現在のデータベースに対して、データの読込も更新も行える様になりました。
・JSONMakeArray関数
この関数は、利用者が指定したデータを JSON 配列形式に変換してくれるというありがたい関数です。たとえば、カンマ区切りテキストを JSON 配列形式に変換してくれます。区切り文字などのルールは利用者が引数として設定することができますので、
関数の構文は、JSONMakeArray ( 値の一覧 ; 区切り文字 ; タイプ ) となります。
例えば・・・
JSONMakeArray ( ”東京/千葉/埼玉/神奈川/山梨” ; “/” ; JSONString )
このような式になっていた場合、「/」(スラッシュ)区切りのテキストを JSON 配列形式に変換するという指示になりますので、結果は以下の様に返されてきます。
[“東京”,”千葉”,”埼玉”,”神奈川”,”山梨”]
タイプは、JSONString、JSONNumber など、見覚えのあるタイプになりますので、日頃から JSON 関数を使用している開発者にとっては馴染みやすい指定方法になっています。
・GetLiveTextAsJSON 関数
画像からテキスト情報を認識して、改行区切りテキストで結果を返す GetLiveText 関数は v19.5 からありましたが、今回のバージョンでは、読み取った画像から取得したテキストデータを JSON 形式で返してくれるという機能です。また、各テキストが、読み取った画像のどのあたりにあるのか、おおよその座標を XY で返してくれるようになり、『この文字はどこにあったのか』といった具合に確認することも可能になりました。
・WebViewer での WebRTC サポート
WebRTC(Web と Real Time Communication の略)は、Webブラウザを使用して、リアルタイムの音声、映像、データ通信を可能にするオープンソースな技術です。この技術が、FileMaker Pro の WebViewer で利用できるようになりました。
※FileMaker Go には対応していません。
WebTRC は、特別なアプリをインストールすることなく Webブラウザがあれば使用できますので、WebViewer にはもってこい。アイデア次第で大きな可能性を秘めた機能だと思います。
この機能は、実際にご覧になった方が早いとおもいます。以下の Webinar がありますので、事前に登録の上、ご試聴頂けましたら幸いです。
【関連 Webinar 情報】
2024年6月16日 12:00 〜
FileMaker 2024 – 機械学習用 JavaScript ライブラリ ml5 を使ってみよう
・[コールバックを使用してサーバー上のスクリプト実行]スクリプトステップの機能拡張
このスクリプトステップは、v20.1 で追加になった比較的新しい機能ですが、v21 で早くもスクリプトの動作に関する機能が拡張されました。
これまでは、クライアントを一時停止せずに、現在のデータベースを共有している FileMaker Server 上のスクリプトを実行して、サーバースクリプトが完了すると、引数で指定したコールバックスクリプトをクライアント上で実行するという動作でした。
今回のバージョンアップでは、[コールバックを使用してサーバー上のスクリプト実行]ステップを実行してスクリプトを実行する際に、現在のスクリプト側の動作を指定できるようになりました。
現在のスクリプトに対して指定できる動作のオプションは、「続行」、「停止」、「終了」、「再開」、「一時停止」の5種類。
動作のイメージとしては、ボタンからスクリプトを実行する際に、現在動作中のスクリプトに、どの様な挙動をさせるのかを「現在の全スクリプトを終了」、「現在のスクリプトを終了」、「現在のスクリプトを再開」、「現在のスクリプトを一時停止」のいずれかで指定することができます。それと同じような動作の設定が、[コールバックを使用してサーバー上のスクリプト実行]スクリプトステップでも行える様になったというものです。
FileMaker Pro 2024 その他の変更部分
ここまでは、割と大きな機能について書いてきましたが、その他にも FileMaker Pro にはいくつかの改善がなされています。詳しくは、リリースノート、FileMaker Pro のヘルプをご覧頂ければと思います。
・新規レイアウト作成時のタッチデバイスの選択肢と画面ステンシルで選択できる値の刷新
・JSON 配列の最後の要素を簡単に取り出す方法が追加された
・出力ファイルの指定の際に、変数の繰り返しでファイルパスを指定できる様になった
・クイックオープン(OpenQuickly)ショートカット
・GetLiveText 関数で、タイ語とベトナム語をサポート
FileMaker Server 2024 における主な変更部分
FileMaker Server 2024 にも機能追加や変更が行われており、『これはありがたい!』と思う機能変更もありました。また、FileMaker Server に対して各種の設定を行う FileMaker Server Admin Console には多くの変更が行われたようです。
それらを以下で、簡単にご説明をします。
・Let’s Encrypt SSL 証明書対応のシステムスクリプト
macOS または Ubuntu 版の Claris FileMaker Server 限定ですが、Let’s Encrypt SSL証明書の要求をしたり、更新をするためのリクエストを行う Shell Script が提供されます。FileMaker Server をインストールすると所定のディレクトリに Shell Script が置かれますので、これを実行。あとは、言われるがままに情報を入力して行けば、SSL証明書の要求〜インストールが行えます。
また、SSL証明書の更新に関しては、Let’s Encrypt SSL証明書の有効期限が 90日間と短いので、自動的に更新処理が行われると、うっかり期限切れということにはなりません。そこで、提供されている SSL証明書の更新用 Shell Script を FileMaker Server のスケジュールで実行することも可能になります。ただ、このスケジュール自体は FileMaker Server の管理者が設定する必要があるので、そこさえ忘れなければ SSL証明書の定期的な更新作業からは解放されることになります。
・新規ユーザをブロック
FileMaker Server のメンテナンスを行うタイミングで、アクセスしているクライアントがいつまで経ってもゼロにならない。あと1クライアント・・・というところで、新たに FileMaker Server へ接続するクライアントが増えてしまい、いつまで待ってもメンテナンスが始められないという経験は、FileMaker Server の管理者であれば一度は経験されているのでは無いでしょうか?
今回のバージョンから、新規ユーザの接続をブロックする機能が追加になりました。Admin Console で「新規ユーザをブロックする」スイッチを有効にするだけで、それ以降は新たなクライアントは FileMaker Server へ接続ができなくなるという機能です。
・スケジュール設定の見直し
これも嬉しい変更です。
FileMaker Server 2023 では、「スクリプトと検証スケジュール」(構成タブ)と「バックアップスケジュール」(バックアップタブ)の設定は、別のタブ内にあり、スケジュールの登録も管理も面倒でした。
FileMaker Server 2024 からは、これらのスケジュールが、構成タブの「スケジュール」で一括管理ができる様になりました。バックアップやシステムスクリプトの実行などを一覧で確認することができる様になりましたので、スケジュールを時系列で確認するということも可能になりました。
なお、バックアップの取得状況は、バックアップタブに全て表示されるようになっています。
FileMaker Server 2024 その他の変更部分
その他、ここまでは、割と大きな機能について書いてきましたが、その他にも FileMaker Server には、管理者によっては「それ嬉しい!」という変更が行われています。詳しくは、リリースノート、FileMaker Server のヘルプをご覧頂ければと思います。
・ログビューアに「展開」と「折りたたむ」追加
・Admin Console に[イベントログのスクリプトログ]の設定追加
・全てのローカルバックアップを表示
・Event.log へのキャプチャ内容の追加(HTTPSトンネリング設定変更、持続的なキャッシュを使用して修復)
・最長呼び出しの使用状況 (TopCallStats.log)とサーバーの使用状況(Stats.log)のログ取得がデフォルトで有効
・管理者の役割で共通(同一)のフォルダを割り当てることが可能になった(下位階層のフォルダも管理可能)
FileMaker WebDirect と FileMaker Go に関する主な変更部分
FileMaker WebDirect と FileMaker Go も今回のバージョンアップを機に、いくつかの機能の追加や変更が行われています。
以下では、それらの変更部分のみ一覧で紹介しておきます。
【FileMaker WebDirect】
・FileMaker WebDirect、FileMaker Data API で[エラーログ設定]スクリプトステップをサポート
・モバイルブラウザでタッチキーボードの設定が使えるようなった(ASCII、URL、電子メール、数字キーパッドのいずれか)
・pulltorefreshenabled パラメータの追加・Admin API への機能追加
【FileMaker Go】
・HTTPS トンネリングのサポート
・[URLを開く]スクリプトステップで外部ブラウザを直接起動
・起動時にファイルを開く をサポート
・ウィジェットを追加をサポート
・[ローカル通知の構成]スクリプトステップのオプション追加
・[レコードのインポート]スクリプトステップでテキストファイル( .csv、.tab、.mer、および .dbf 形式)をサポート
・HEIC 形式のイメージファイルがオブジェクトフィールドでサポート
Claris FileMaker 2024 まとめ
このブログ記事では、速報として新機能や変更になった機能について記載してきました。
私も、FileMaker 2024 の新機能経験としては、初心者レベルとなりますので、これからバンバン触って実験をして、スキルアップを狙って行きたいと思います。
手始めとして、Claris の公式 Webinar も予定していますので、事前登録の上、ご試聴頂けましたら幸いです。
Claris FileMaker 2024 情報源
【Claris による新機能紹介】
・新しい Claris FileMaker 2024 の新機能紹介と無料評価版ダウンロード
【Claris 公式 Webinar】
・6月5日:
Claris FileMaker 2024 のご紹介(録画公開されました)
・6月14日:
FileMaker 2024 – 機械学習用 JavaScript ライブラリ ml5 を使ってみよう(録画公開されました)
サンプルファイルはこちらから
・6月20日:
Claris FileMaker 2024 では、AI と連携することが可能になりました(録画公開されました)
サンプルファイルはこちらから
・6月28日:
Claris FileMaker 2024 で拡張されたトランザクション機能を使う
【Claris FileMaker 2024 リリースノート】
・FileMaker Pro リリースノート